今日は私の昔話です。
高校時代の友人(Aちゃんとします)は医学部進学を機に私と同時期に故郷を離れて一人暮らしをはじめました。
私は故郷から都会の政令地方都市へ、Aちゃんは私たちの故郷からさらに地方へ移り住みました。
田舎で育った私にとっては都会の生活と都会で育った開けた価値観をもった友人たちとの交流がすごく刺激的で楽しかったです。
飲んだくれていましたから覚えていないこともたくさんありますが、多くの飲み友達に囲まれて、ともに笑い転げながら、そして、たぶん、だいぶん周りに迷惑をかけつつ、保護されながら、概ね楽しい学生時代を過ごしました。
一方で、Aちゃんは大学生活があまり楽しくなかったようでした。
夏休みに故郷に帰省して会うたびに、大学が面白くないとぼやいてました。
彼女はいつも長期休暇に入るとすぐに実家に帰っていたようです。
彼女はひさしぶりに会うたびに、だんだんと白く、細くなっていっていました。運動は嫌い。日光嫌い。日焼けしたくない。ダイエットしている。豆腐くらいしか食べてないと、よく言っていました。
私は学生時代に住んでいた街が好きだったので夏休みもバイトしながら遊んでいました。
親からの帰ってこいコールをもらって仕方なく1週間くらい帰るような感じでしたし、実家にいても、高校時代の友達とつるんでばかり。ほとんど家にいなかったです。
帰省するとAちゃんに連絡して飲んでました。
今思えばAちゃんの飲み方はおかしかったです。
ビールが大好きだったのですが一杯目なんてほぼ一気飲み。一口で体に流し込む量がすごく多かったですし、あっという間に酔っ払い、頻繁に記憶を飛ばしていました。
あれは私が修士1年生、そしてAちゃんが医学部5回生の夏でした。
帰省するとすぐにAちゃんに連絡して2人で飲みにいきました。近所の安い居酒屋にいって派手に飲んで2人とも記憶を無くしました。
その時、Aちゃんは、大学にあまり友達がいない、長期休暇になるとすぐに実家に帰ってくるけど、食事もあまり食べないし(当時から炭水化物抜きダイエットが流行り初めてました)食べるのは豆腐くらいで、家でごろごろしている。こうしてMarinaと飲むのがいつもすごく楽しみ。この夏休みが終わると厳しい研修期間に突入するからこれから辛いかもしれない、と言ってました。
私はなんとなく心配だったんです。
だからその時の帰省中には頻繁に会いました。短い滞在時間の間に少なくても3回くらいは会ったと思います。
短い夏休みが終わり、私は故郷から大学に戻りました。
9月に入ってすぐの早朝に故郷にいるAちゃんとの共通の友人から電話がかかってきました。
友人は泣いていました。
「Aちゃんが下宿先のマンションの非常階段から転落死した」と。
Aちゃんの部屋には飲み干されたビールの500ml缶が2個、転がっていたそうです。厳しい研修が始まる前日の夜のことでした。
警察には自殺と処理されたそうです。
遺書に相当するものは何もありませんでした。
私はあれは事故だったって今までずっと思いこもうとしていました。彼女が自ら死を選ぶはずなんかない。小さい頃から医者になりたくてずっと勉強を頑張ってたのに、って。
でもね、アルコールの害について知識を得た今となっては警察の判断が妥当だったことが分かりました。
彼女は行き過ぎた食事制限のダイエットと過度の飲酒で脳が誤作動を起こし鬱状態になっていたのでしょう。
そして、心が弱くなって、過酷な研修が過剰にプレッシャーとして感じられたのでしょう。
遺書がなかったので思いつめた覚悟の上の行動ではなかったと思いますし、いろいろな感情の揺れのタイミングが重なって、アルコールの魔に引っ張られるようにして、あっちへいってしまったのだと思います。
後から共通の知人を辿って彼女の大学での生活を聞きました。
休み時間によく机につっぷして寝ていたそうです。何かの検査の授業があり、前日に飲まずに来るようにと言われていた時でさえ、我慢できずに飲んでしまっていたそうです。
おそらくアルコール依存症になっていたのでしょう。
地方の限られた人間関係の中で、気があう友を見つけられず、孤独を感じつつ、1人で黙々と飲んでいたのでしょう。そして、おそらく、毎日、二日酔いの体を引きずるようにして大学に行き、しんどい頭と体で必死に授業を受けていたのでしょう。
当時の私は未熟で、そして自分も片足を棺桶に突っ込むようなの飲み方をしていた飲んだくれで、彼女の異変に全く気づきませんでした。
そして何もできまでんでした。
私と彼女の違いは孤独だったかどうか、だと思います。
もっと都会の大学に行き、もっとたくさんの人と交わっていれば、孤独を感じずに済んだのかもしれませんし、誰かに異変を気づいてもらえたかもしれません。
女性にとって行き過ぎた食事制限のダイエットと過度の飲酒そして孤独との組み合わせは命に関わる危険があると思います。
私も炭水化物抜きのダイエットと過度の飲酒で自律神経と食欲中枢が壊れて過食嘔吐の摂食障害になった経験もありますし、そんな女性が最近増えてきていると知人から聞くこともあります。
私が、ちょいちょい「しっかり白米食べようね!」と言うのはこの経験からも来ています。
しっかりご飯食べようね。
脳と体と心にちゃんと栄養を届けようね。
そしてなにかしらのコミュニティに入って仲間を作ろうね、と。
私がいる小太郎さんのコミュニティでもいいですし、オンラインコミュニティは他にもいろいろありますし、地域の断酒会や AAでもどこでもいいんです。
自分と価値観があうどこかに所属されるといいと思います。
もし、これを読んでいる方の中にお酒をやめたくてもなかなかやめられなくて、大スリップして自責の念と絶望の暗闇にいる人がいたら。
どんな手を使っても、今、生きのびてください。
私は彼女にそうして欲しかった。
あなたの絶望はアルコールのせいです。
あの時、今のようにSNSがあって、小太郎さんがいて、コミュニティがあれば。
私は彼女を失わずにすんだかもしれません。
改めて彼女の冥福を心から祈ります。
Marina
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